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東京高等裁判所 平成11年(行ケ)59号 判決

原告

三和メーター株式会社

代表者代表取締役

【A】

訴訟代理人弁理士

【B】

【C】

【D】

【E】

被告

三和テスメックス株式会社

代表者代表取締役

【F】

被告

三和エム・アイ・テクノス株式会社

代表者代表取締役

【F】

被告

三和電気計器株式会社

代表者代表取締役

【F】

上記3名訴訟代理人弁理士

【G】

【H】

【I】

【J】

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告

特許庁が、平成9年審判第21443号事件について、平成11年1月14日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告らの負担とする。

2  被告ら

主文と同旨

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

原告は、別添審決書写し別紙「本件商標」欄記載の「SANWA」の欧文字を横書きした構成よりなり、商標法施行令別表の区分による第9類「タクシーメーターその他の測定機械器具」を指定商品とする登録第3213551号商標(平成6年2月21日登録出願、平成8年3月6日出願公告、同年10月31日設定登録、以下「本件商標」という。)の商標権者である。

被告らは、平成9年12月22日、原告を被請求人として、本件商標につき登録無効審判の請求をした。

特許庁は、同請求を平成9年審判第21443号事件として審理したうえ、平成11年1月14日に「登録第3213551号商標の登録を無効とする。」との審決をし、その謄本は、同年2月3日、原告に送達された。

2  審決の理由の要旨

審決は、別添審決書写し記載のとおり、同写し別紙「引用商標」欄記載の「sanwa」の欧文字を横書きした構成よりなる商標(以下「引用商標」という。)が、本件商標の登録出願時に、請求人(被告ら)の業務に係る商品である回路計、温度計、回転計、照度計、光度計、光束計、表面粗さ測定器等の商品についての商標として、取引者・需要者の間に広く認識されるに至っていたところ、本件商標と引用商標とは、称呼、外観、観念が同一又は近似で互いに紛れるおそれのある類似した商標であり、引用商標の使用商品が測定機械、本件商標の指定商品も測定機械器具であることから、これらの商品が同一販売店、販売代理店等で取り扱われるであろうことが想定され、そうすると、本件商標が、その指定商品「タクシーメーターその他の測定機械器具」に使用されるときは、当該商品が請求人又は請求人と何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生じるおそれがあり、商標法4条1項15号に違反して登録されたものであるから、同法46条の規定により、その登録を無効とすべきものであるとした。

第3  原告主張の審決取消事由の要点

審決の理由のうち、本件商標と引用商標とが類似する商標であることは認める。

審決は、引用商標の著名性についての認定を誤り(取消事由1)、また、引用商標の使用商品の性質及び本件商標の指定商品に係る取引形態の各認定を誤って、引用商標の使用商品及び本件商標の指定商品についての販売店、需要者が共通する旨誤って認定した(取消事由2)結果、本件商標がその指定商品に使用されるときは、被告ら又は被告らと何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生じるおそれがあるとの誤った結論に至ったものであるから、違法として取り消されなければならない。

1  取消事由1(引用商標の著名性についての認定の誤り)

審決は、「請求人(注、被告ら)の引用商標は、遅くとも本件商標の登録出願時である平成6年2月21日頃には、請求人の業務に係る商品である回路計、温度計、回転計、照度計、光度計、光速計(注、「光束計」の誤記と認められる。)、表面粗さ測定器等の商品についての商標として既にこれらの商品を取り扱う取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたとみるのが相当であり」(審決書15頁3~10行)と認定した。

しかしながら、引用商標は、被告らの主要商品である回路計(電気磁気測定器に属する。)を表示するものとして、その取引者・需要者の間で広く認識されてはいたが、測定機械器具としての温度計、回転計、照度計、光度計、光束計、表面粗さ測定器を表示するためのものとして、その取引者・需要者の間で広く知られていたとはいえず、特に、タクシーメーターの取引者・需要者の間で、被告らを想起する程に著名なものではないから、審決の上記認定は誤りである。

2  取消事由2(引用商標に係る使用商品の性質等の認定誤り)

(1)  審決は、「本件商標の指定商品『タクシーメーターその他の測定機械器具』と引用商標の使用商品である回路計、温度計、回転計、光度計、光速計(注、「光束計」の誤記と認められる。)、表面粗さ測定器等の商品とを比較すると、引用商標の使用商品は、その用途から見て測定機械であり、他方、本件商標の指定商品も測定機械器具であることから、これらの商品が同一販売店、販売代理店等で取り扱われるであろうことは想定するに難くなく、その需要者(ユーザー)も、例えば、タクシーメーターとタコメーター(回転計)とは自動車に取り付けられることがあり、自動車の製造業者・修理業者が取り扱う商品であることが想定されるところである。」(審決書18頁1~13行)と認定した。

そして、商標法上の商品としては、この認定に係る引用商標の使用商品のうち、回路計が電気磁気測定器に、温度計、回転計、光度計、光束計、表面粗さ測定器が測定機械器具にそれぞれ属するものとされている。

しかしながら、「温度計、回転計、照度計、光度計、光束計、表面粗さ測定器」などの表示は、取引の実際においては、商標法上の測定機械器具に属さない商品に用いられることもあるところ、被告らの商品カタログ(甲第4号証)には、被告らの取扱いに係る「回転計(タコメーター)」が、電気設備保守管理用測定器の項に、照度計、温度計、絶縁抵抗計、接地抵抗計とともに掲載されており、上記「回転計(タコメーター)」が電気機械器具の1種であることが理解される(なお、商標法4条1項15号は、比較する商標が同一又は類似である場合には、その指定商品又は使用する商品が非類似であることが前提であるところ、本件商標と引用商標とが類似することは明らかであるから、審決は、引用商標の使用商品として被告らが現実に取り扱っている回転計(タコメーター)が、本件商標の指定商品であるタクシーメーターと非類似であり、商標法上の「測定機械器具」に属さない商品、すなわち電気機械器具に属するテスタの1種と認定したと考えられる。)。また、審決は、引用商標につき「請求人(注、被告ら)所有の商標登録第1301104号に係る商標と同一の商標」(審決書12頁18~20行)と認定しているところ、当該登録第1301104号商標は、平成3年政令第299号による改正前の商標法施行令別表に基づく類別(以下「旧類別」という。)による第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品とするものである。

そうすると、引用商標は、測定機械器具ではなく、電気機械器具に使用されていたものと見るのが相当である。そして、電気機械器具と測定機械器具とは、同一販売店、販売代理店等で取り扱われることが一般的といえないし、需要者・取引者を異にするのが通例である。

のみならず、被告らの商品カタログ(甲第4号証)によると、被告らが、引用商標の使用商品の一つとして取り扱う回転計(タコメーター)は、その形状からして携帯用であり、自動車に取り付けられる商品でないことが認められ、また、その販売形態は被告ら自身又はその販売代理店を通じ、かつ、注文生産的に行われると考えられる。

他方、本件商標の指定商品である「タクシーメーター」は、運輸省により認可されたタクシー及びハイヤーにのみ取り付ける特殊な商品であって、主な需要者は、該商品に関する専門的知識を有するタクシー会社であり、取引形態も原告自身又は原告の販売代理店を通じ注文生産的に行われ、また、タクシー業界、タクシーメーター製造業界とも既存事業者からなる固定的な業界であって、取引系列も固定化している。

そうすると、本件商標を付した原告の取扱いに係るタクシーメーターと、引用商標を付した被告らの取扱い商品とが、同一販売店、同一販売代理店において取り扱われることはあり得ないし、需要者・取引者が、自己の取り扱う商品の出所を誤認するなどということも考えられないところである。

したがって、審決の上記認定は誤りである。

(2)  被告らは、本件商標の指定商品において、タクシーメーターが測定機械器具の範疇に属するものとされているから、本件商標が商標法4条1項15号に違反してなされたものであるかどうかは、タクシーメーターを含む測定機械器具の全部につき、本件商標の使用により被告らの引用商標との間に混同が生じるかどうかによって判断すべきであり、本件商標を使用する商品をタクシーメーターに限った主張が失当であると主張する。

しかしながら、商標登録無効審判は、商標登録に係る指定商品が2つ以上のものについては、指定商品ごとに請求することができること等によれば、仮に、指定商品の一部について無効原因が存在したとしても、指定商品全部についての登録を無効としなければならないものではない。

第4  被告らの反論の要点

審決の認定・判断は正当であり、原告主張の取消事由は理由がない。

1  取消事由1(引用商標の著名性についての認定の誤り)について

原告は、引用商標が、測定機械器具としての温度計、回転計、照度計、光度

計、光束計、表面粗さ測定器を表示するためのものとして、その取引者・需要者の間で広く知られていたとはいえないと主張するが、誤りである。

すなわち、昭和16年に設立された三和電気計器製作所は、昭和25年に、小型携帯用テスタ(回路計)の製造販売を担当する三和電気製作所(現在の被告三和テスメックス株式会社)、中型・大型テスタ及び電気計測器の製造販売を担当する三和電気計器製作所(現在の被告三和エム・アイ・テクノス株式会社)、無線測定器の製造販売を担当する三和無線測器研究所に分離され、昭和28年12月には、テスタの販売業務を統合して、その販売のみを担当する被告三和電気計器株式会杜が設立された。これら各社は、三和グループを結成し、被告3社のうち、被告三和電気計器株式会杜が商品の販売を、他の2社が商品の製造を担当している。その後、被告らは、昭和44年以降温度計の、昭和39年以降回転計の、昭和61年以降照度計、光束計、光度計の、昭和50年以降音響測定器の、平成3年以降表面粗さ測定器の、各製造販売を開始して、現在に至っている。そして、被告らは、昭和49年から、引用商標を、被告各社の製造販売する全商品の共通の商標として用いており、各種テスタと同様、温度計、回転計、照度計、光度計、光束計、表面粗さ測定器についても引用商標を表示してその製造販売を行っている。

被告らは、その商品を全国の代理店及び各代理店の系列の販売店等を介して需要者に販売しているが、これらの代理店、販売店は被告らの商品だけでなく、他の業者の計測機器、測定機器も取り扱っている。また、被告らの商品の需要者は、全国の大手企業から中小企業まで含むメーカー、建設業者、工事業者等であり、各種自動車、タクシーの修理業者も含まれている。被告らが製造販売する商品の販売形態は、商品カタログにより代理店を通じて注文を受けて販売するというものであり、そのため、総合カタログ及び個別商品のカタログは、毎年継続して、代理店を通じ全国の需要者に頒布されている。

これらの活動の結果、引用商標は、本件商標の登録出願当時、被告らの業務に係る、各種テスタ(電気磁気測定器)及び温度計、回転計、照度計、光度計、光束計、表面粗さ測定器(測定機械器具)等を示す商標として、日本全国の取引者・需要者に周知とされるに至っていたものである。

したがって、引用商標は測定機械器具としての温度計、回転計、照度計、光度計、光束計、表面粗さ測定器を表示するためのものとして、その取引者・需要者の間で広く知られていたものである。

2  取消事由2(引用商標に係る使用商品の性質等の認定誤り)について

原告は、引用商標が、測定機械器具ではなく、電気機械器具に使用されていたと主張するところ、引用商標の使用商品のうち、回路計が電気磁気測定器として、電気機械器具に属する商品であることは認めるが、同様に引用商標を用いる温度計は温度を、回転計は回転の速さ及び/又は回転数を、照度計は照明される面に入射される光束の密度を、光度計は定量比較するために2つの光源の光度を、光束計はある面を単位時間に通過する光の量を、表面粗さ測定器は例えば切削加工面の表面の粗さを、それぞれ測定するものであって、いずれも測定機械器具に属する商品であるから、これらが全部電気機械器具であり、引用商標が測定機械器具に使用されていないとする主張は誤りである。

原告が、上記主張の根拠とする被告らのカタログ(甲第4号証)は、被告らの回転計(タコメーター)、照度計、温度計が、電気設備の保守管理用の測定器(テスター)としても利用できるよう設計されていることを説明しているにすぎない。

また、原告は、本件商標を使用している商品であるタクシーメーターが特殊な商品で、これと、引用商標を付した被告らの商品とが、同一販売店、同一販売代理店において取り扱われることはあり得ないとか、需要者・取引者が、自己の取り扱う商品の出所を誤認するなどということも考えられない等と主張するが、本件商標の指定商品は「タクシーメーターその他の測定機械器具」であり、タクシーメーターは、測定機械器具の範疇に属するものとされている。したがって、本件商標が商標法4条1項15号に違反してなされたものであるかどうかは、タクシーメーターを含む測定機械器具の全部につき、本件商標の使用により被告らの引用商標との間に混同が生じるかどうかによって判断すべきであり、本件商標を使用する商品をタクシーメーターに限った主張はそれ自体失当である。

第5  当裁判所の判断

1  取消事由1(引用商標の著名性についての認定の誤り)について

昭和56年発行と認められる40周年記念誌「sanwa THE 40TH ANNIVERSARY」(乙第7号証の2)及び平成3年発行と認められる「創業50周年記念誌 五十星霜」(乙第7号証の3)並びに被告ら代表者鴨下清作の報告書(乙第34号証)によれば、被告らの沿革に関し、昭和16年に設立された三和電気計器製作所(昭和21年に三和電気計器株式会社に改組)は、昭和25年に一旦解散したものの、同年その後身として、小型携帯用テスタ(回路計)の製造販売を担当する三和電気製作所(現在の被告三和テスメックス株式会社)、中型・大型テスタ及び電気計測器の製造販売を担当する三和電気計器製作所(現在の被告三和エム・アイ・テクノス株式会社)、無線測定器の製造販売を担当する三和無線測器研究所が設立され、昭和28年12月に、販売部門を担当する被告三和電気計器株式会杜が設立されたこと、被告3社は、被告三和電気計器株式会杜が商品の販売を、他の2社が商品の製造を担当して、当初は回路計(テスタ)の製造販売を行っており、昭和39年にはその国内シェアが75%を占め、また生産台数も昭和43年に500万台、昭和57年には800万台に達したこと、被告らは、昭和40年代ころから、温度計等、回路計以外の各種測定機械器具の製造販売を開始し、また、昭和49年にその製造販売する商品の商標として引用商標を採択したことが認められる。

そして、販売会社である被告三和電気計器株式会社発行の引用商標が付された商品カタログの昭和58年版(乙第8号証の1)には温度計及び照度計が、昭和60年版(同号証の2)には温度計、照度計及び速度計(回転計)が、昭和62・63年版(同号証の3)、平成元年版(同号証の4)、平成2年版(同号証の5、6)、平成3年版(同号証の7)、平成5・6年版(同号証の8)及び平成6年版(同号証の9)には光パワーメータ(光束計)、温度計、照度計及び回転計が掲載されている。

そうすると、被告らは、その主力商品が回路計(テスタ)であるとしても、本件商標の登録出願日である平成6年2月21日の相当以前から、引用商標を温度計、照度計、回転計、速度計、光束計等、回路計以外の各種測定機械器具に使用していたことが認められ、かつ、被告らの回路計に係る強力な販売力が相俟って、本件商標の登録出願日までには、引用商標が被告らの業務に係る商品である温度計、照度計、回転計、光束計等についての商標としてこれらの商品を取り扱う取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたものと推認することができる。

したがって、審決が「請求人の引用商標は、遅くとも本件商標の登録出願時である平成6年2月21日頃には、請求人の業務に係る商品である回路計、温度計、回転計、照度計、光度計、光速計(注、「光束計」の誤記と認められる。)、表面粗さ測定器等の商品についての商標として、既にこれらの商品を取り扱う取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたとみるのが相当であり」と認定したことは、回路計に関する以外に、少なくとも温度計、回転計、照度計、光束計等の測定機械器具について誤りがない。

なお、原告は、本件商標が、タクシーメーターの取引者・需要者の間で、被告らを想起する程に著名なものではないとも主張するが、タクシーメーターの取引者・需要者に限定して、その間で著名であることを要するものではないことは後記のとおりである。

2  取消事由2(引用商標に係る使用商品の性質等の認定誤り)について

原告は、被告らの商品カタログ(甲第4号証、なお、乙第8号証の5(平成2年版)と同一のものと認められる。)に、「回転計(タコメーター)」が、電気設備保守管理用測定器の項に、照度計、温度計、絶縁抵抗計、接地抵抗計とともに掲載されていること、被告三和テスメックス株式会社が、旧類別による第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)電気材料」を指定商品とする登録第1301104号商標(甲第2号証)を有しており、その構成態様が引用商標と同一であることを理由として、被告らの製造販売する回転計(タコメーター)が電気機械器具の1種であると主張し、さらに、引用商標は、測定機械器具ではなく、電気機械器具に使用されていたものと見るのが相当であるとも主張する。

しかしながら、前示商品カタログ(甲第4号証、乙第8号証の5の59頁)の該回転計(タコメーター)に関する説明には、該回転計(タコメーター)が、電気又は磁気を測定の対象とする電気磁気測定器として、あるいはその他の理由で電気機械器具に含まれると考えるべき記載は見当たらない。また、該商品カタログにおける電気設備保守管理用測定器には、絶縁抵抗計、接地抵抗計のほかに電気磁気測定器には当たらない照度計、温度計も含まれているから、電気設備保守管理用測定器が、すべて電気磁気測定器であるわけでないことも明らかである。さらに、登録第1301104号商標と本件商標とが構成を同じくするとしても、別の商標であるから、被告三和テスメックス株式会社が登録第1301104号商標を有しているからといって、本件商標の使用商品のうちの、前示回転計(タコメーター)その他、温度計、照度計、光束計が電気磁気測定器として、あるいはその他の理由で電気機械器具に含まれると考えるべき理由はない(なお、原告は、審決が、商標法4条1項15号を適用したことを根拠として、審決が該回転計(タコメーター)を、本件商標の指定商品であるタクシーメーターと非類似であり、商標法上の「測定機械器具」に属さない商品、すなわち電気機械器具に属するテスタの1種と認定したとも主張するが、審決には、該回転計(タコメーター)を測定機械器具に属さない商品と認定したこと、ましてテスタの1種と認定したことを示唆するような記載は全く存在しない。)

そして、審決の「測定機械」(審決書18頁5行)との表現は、回路計等の電気磁気測定器と、回転計、温度計、照度計、光束計等の測定機械器具とを併せた趣旨として用いているものと認められるので、審決が、「引用商標の使用商品は、その用途から見て測定機械であり、他方、本件商標の指定商品も測定機械器具であることから、これらの商品が同一販売店、販売代理店等で取り扱われるであろうことは想定するに難くな(い)」と認定したことに誤りはない。

原告は、さらに、引用商標の使用商品である前示回転計(タコメーター)が携帯用であって、自動車に取り付けられる商品でなく、かつ、その販売形態が、被告ら自身又はその販売代理店を通じて注文生産的に行われるものであり、他方、本件商標を指定商品であるタクシーメーターが特殊な商品で、これと、引用商標を付した被告らの商品とが、同一販売店、同一販売代理店において取り扱われることはあり得ないとか、需要者・取引者が、自己の取り扱う商品の出所を誤認するなどということも考えられない等と主張する。

しかしながら、仮に前示回転計(タコメーター)及びタクシーメーターに関しては、その主張のとおりであるとしても、本件商標は、指定商品を「タクシーメーターその他の測定機械器具」として設定登録されたものであり、ここで「タクシーメーター」は、測定機械器具の範疇に属するその例示であって、指定商品が「測定機械器具」の1つであることは明白である(したがって、原告が、商標登録に係る指定商品が2つ以上あることを前提としてなす主張は、その前提を欠き主張自体失当である。)から、本件商標の設定登録が商標法4条1項15号に違反してなされたものであるかどうかは、タクシーメーターに限ることなく、測定機械器具一般について、本件商標の使用により被告らの引用商標との間に混同が生じるかどうかによって判断すべきところ、前示のとおり、引用商標は測定機械器具である回転計、温度計、照度計、光束計についても用いられているから、審決が、「タクシーメーターとタコメーター(回転計)とは自動車に取り付けられることがあり、自動車の製造業者・修理業者が取り扱う商品であることが想定される」としたこと自体は相当ではないとしても、本件商標の指定商品と引用商標の使用商品とが需要者を同じくするとの趣旨の限度で誤りはない。

3  以上のとおり、原告の審決取消事由の主張は理由がなく、他に審決にこれを取り消すべき瑕疵は見当たらない。

よって、原告の請求は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 石原直樹 裁判官 清水節)

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